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活動内容

要望書

令和7年 4月 12日
全国女性税理士連盟
会長 奥田 よし子

消費税法の改正要望書

消費税は、税制全体のバランスの中で広い課税ベースと単一の税率によって、水平的公平を確保するという役割を担うものとして昭和63年(1988年)に施行された。その後、令和元年(2019年)に消費税率の引き上げとともに、複数税率が実施され、令和5年(2023年)より適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されるなどの改正が行われてきた。これらの改正は、税額計算及び手続きを複雑にし、事業者に重い事務負担やコスト負担を強いている。
 全国女性税理士連盟は、今日の状況を踏まえるとともに、簡素で公平な税制の構築を目指し、以下の改正を強く要望する。

1. 複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすること

食料品等に対する軽減税率の導入は、低所得者対策と説明されてきたが、低額所得者より高額所得者の方により多くの負担軽減が及ぶことになり、逆進性の緩和には結びつかない。また、対象品目に当たるか否かの判断が難しく、かつ、経済取引の中立性を阻害する要因にもなっている。一つの消費活動に複数税率が混在することもあるなど、事務処理の複雑化による事業者の負担も大きい。したがって複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすべきである。

2. すべての事業者を課税事業者とし、あらたに零細事業者について申告不要制度を導入すること

消費税の課税事業者及び適格請求書発行事業者の選択は、免税事業者制度に由来し、消費税法が複雑化する一因となっている。インボイス制度の実務においても、適格請求書発行事業者ではない事業者(殆どが免税事業者)が存在することにより、経理処理は区分が必要となり、税額計算及び手続きも複雑になり、事業者の過重な事務負担となっている。
 これを払しょくするため、すべての事業者を課税事業者として取り扱うこととし、その課税期間の課税売上高が一定額以下の零細事業者については、申告不要とする制度を創設すべきである。

3. 簡易課税制度は基準期間を廃止し、確定申告時に選択できる制度とすること

基準期間における課税売上高が5千万円以下の事業者は、煩雑な仕入税額控除の計算をせず、事業区分に応じたみなし仕入率を用いて消費税額を計算する簡易課税制度を選択することができる。また簡易課税制度の選択ないし取りやめは、当該課税期間が開始する日の前日までに届出書を提出する必要がある。一度選択した計算方法は2年以上継続しなければならない。
 この簡易課税制度の選択に基準期間(特定期間を含む。)を用いる現行の制度は、事業者にとって、基準期間の売上高と当該課税期間の売上高とが乖離するなど、事業者の現状の経営実態に即していない。
 簡易課税制度の選択にあたっては基準期間を廃止し、当該事業年度の確定申告書作成時に計算方法を選択適用することは、租税回避行為ではなく、手続き上も問題はない。むしろ消費税の円滑な運用と多くの中小事業者の負担を軽減するための措置として柔軟な適用が認められるべきである。

4. 消費税法の改正に伴う事務処理やコスト負担の増加に配慮すること

インボイス制度の導入ならびに普及策としての特例の施行に伴い、経理事務においては、複数税率の区分に加えて、適格請求書の確認、各種特例の適用判定が必要となり、その結果を区分記載したり、特例の詳細を記載しなければならなくなるなど、経理事務負担は著しく増大している。
 基幹税として簡素であるべき消費税法の改正や特例の施行にあたっては、その計算のための事務処理やコスト負担が著しく増加することがないよう、慎重な検討を要望する。

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