- 令和6年 4月 13日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 西原 千景
国民年金第3号被保険者制度廃止の要望書
全国女性税理士連盟は、国民年金第3号被保険者制度の廃止を要望する。
公的年金の加入が義務付けられている20歳以上59歳以下の国内居住者のうち、会社員など厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者(年収130万円未満)である第3号被保険者は、国民年金保険料を納める必要はない。第2号被保険者全体と会社が折半負担した保険料の中から、第3号被保険者分の国民年金保険料が拠出されている。片働き世帯を標準世帯とする年金制度は今や時代遅れとなっている。保険料負担の不公平や就業調整等の弊害をなくす一方で、育児・介護等が理由で就業できない被扶養配偶者を保護するなど時代に即した制度設計が求められている。
1. 第3号被保険者制度は、20歳代~50歳代の労働人口の就業を抑制する要因となり、社会的な損失を招いている。
第3号被保険者は、年収が130万円以上になると、第1号被保険者として、自身で社会保険料を負担※しなければならなくなり、手取り額の逆転現象が生じる。これは就業を抑制する要因となっており「130万円の壁」と言われている。少子高齢化社会における労働力不足、社会保障財源不足の観点から問題となっている。またこの就業調整は、女性の低賃金化を招き経済的自立の妨げや、キャリア形成を阻むことになり、わが国のGDPを下げるなどの社会経済的損失を招いている。
※令和6年4月現在、国民年金保険料は月額16,980円、国民健康保険料、介護保険料の合計は、自治体や各人の事情により異なるが、均等割のみで月額6,842円(東京都区内の場合)である。
2. 第3号被保険者制度は、共働き・単身世帯と比べて片働き世帯を優遇している。
わが国では昭和36年に国民皆年金が実現したが、その際、世帯単位で年金は検討されていたため専業主婦の加入は任意とされた。その後昭和60年の制度改正において第3号被保険者制度が新設され、専業主婦は保険料を負担しないまま国民年金の強制加入の対象となった。しかし現在、共働き・単身世帯が増えるなど家族のあり方が多様化する中で、片働き世帯のみを優遇する制度となり、様々な不公平の要因となっている。
同一賃金の単身世帯と片働き世帯とを比較してみると、1人分の保険料負担について、前者は基礎年金1人分を受給するのに対して、後者は基礎年金2人分を受給することになり、不公平が生じている。
自営業者などの第1号被保険者の妻は、たとえ収入がなくても第1号被保険者として国民年金保険料を負担しなければならない。
また夫の収入が高い世帯ほど、専業主婦世帯の割合は高い傾向にある。高所得世帯の第3号被保険者が保険料を負担せず、一方で収入の低い世帯や中小企業がその保険料を負担している状況になっており、早急に是正する必要がある。
3. 中小企業とその従業員は、これ以上の社会保険料の負担に対応することは困難であり、早急な制度改正が必要である。
会社と従業員で折半し負担しなければならない厚生年金保険料率は現在18.3%である。健康保険料、介護保険料を加えた社会保険料率の合計は約3割となり(東京都29.88%、大阪府30.24%)、労使双方にとって重い負担となっている。そのため中小企業では賃上げも、これ以上の保険料負担の増加に対応するのも困難な状況である。
現在、国は、厚生年金の適用拡大によりパート労働の主婦を厚生年金に適用し第3号被保険者数を減少させることを図っている。しかし中小企業の経営や雇用を守るためにも、厚生年金の適用拡大だけではなく第3号被保険者制度の廃止も行い、国民年金保険料は各加入者が負担する制度への改正を急ぐ必要がある。
4. 第3号被保険者制度は廃止し、育児・介護等を理由とする保険料免除制度等の整備を行う必要がある。
国民年金加入世代(20歳以上59歳以下)では、既に共働き世帯が7割を超えている。負担の不公平や就業調整等の弊害などの要因となる第3号被保険者制度は廃止し、全ての年金加入対象者は、第1号被保険者もしくは第2号被保険者として自身の保険料を負担すべきである。
育児、介護などの負担あるいは自身の病気やケガなどで、希望していても働けない事情を抱える人の年金権の確保のために、第1号被保険者でも納付不要対象者の拡大や、免除制度の整備※を行う必要がある。
※現在、第1号被保険者には、経済的に納付が困難な場合等の救済措置として、年金受給額は減るが、保険料の納付を免除または猶予する制度がある。産前産後期間については納付が不要であり、年金受給額も減らない。