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活動内容

要望書

令和6年 2月 10日
全国女性税理士連盟
会長 西原 千景

民法改正要望書
民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を要望する

選択的夫婦別氏制度は、現行の同氏に加えて、姓を変えることを望まない人のために選択肢を追加するものである。婚姻の在り方に多様性を認めることで、国民がより生きやすく、より働きやすくなることにつながり、ひいては社会経済の活性化を促進することが期待される。
 全国女性税理士連盟は、憲法に規定する両性の本質的平等の保障および個人の自由意思尊重の観点から、また喫緊の課題である少子化対策の観点からも、以下の理由により、立法府において、すみやかに民法750条を改正し、選択的夫婦別氏制度を導入するよう強く要望する。

1. 婚姻に伴う改姓は、婚姻前から積み上げてきた職業生活、社会生活に影響を及ぼす

近年、女性の社会進出は顕著である。婚姻によって改姓すると職業生活、社会生活で積み上げてきた信用や実績等の断絶、名義変更に伴う負担等も生じるが、この改姓による不利益を被るのは多くの場合女性である。キャリアの継続等のために婚姻を躊躇したり、事実婚を選ぶ夫婦も少なくない。

2. 通称使用は、便宜的なものに過ぎず、根本的な解決にはならない

政府は、運転免許証、住民票、マイナンバーカード等への旧姓併記を可能とする施策を推し進めているが、通称使用には法的根拠がなく、税理士等の国家資格の免許、税金や社会保険などの公的な手続きは戸籍名が要求されている。
 税理士会では2003年から旧姓使用が認められ、婚姻に伴い氏を変更した会員の多くが旧姓で登録をしている。しかし、税法では納税者氏名は戸籍名となるため、旧姓は屋号と扱われる。インボイス制度において適格請求書番号の検索サイトを税理士登録名で公表するためには、納税者氏名を屋号に変更する手続きが必要となり、役所で住民票に旧姓併記の手続きを先に行う必要がある。成年後見制度においても、登記事項証明書では戸籍名が求められるため、成年後見活動は税理士名ではできない。このように二つの姓をもつ煩雑さが残されている。
 世界で夫婦同氏が強制されているのは日本だけであり、旧姓併記も通称使用も海外での活動には通用しない。国内でもマネーロンダリング対策の観点から、事実上旧姓での通帳作成が認められず、旧姓で事業を継続する弊害となっている。
 姓の煩雑な使い分けは本人にも周囲にも様々な負担を伴う。旧姓併記は証明の一助に過ぎず、民法改正による根本的解決が望まれる。

3. 同氏強制は婚姻を阻害し、少子化の一因となっている

民法750条は同氏を強制しているため、長男長女同士や一人っ子同士の婚姻を阻害している。個人のアイデンティティである生来の氏を「変えたくない」、あるいは互いの立場や氏を尊重したいという思いが婚姻を躊躇する要因にもなっている。多様な家族の在り方を認めない現行制度が若年層の意識と大きく乖離しており、自分らしく人生設計ができない制度であることが若者の婚姻率を下げ、少子化を招いている。

4. 立法府は、最高裁判決の指摘、国連の勧告等を真摯に受け止め、選択的夫婦別氏制度の導入について早急に議論を尽くすべきである

憲法24条は、個人の尊厳と両性の本質的平等をうたっている。人権が最大限に尊重され、自由と平等が保障される豊かな社会を構築するためには、氏の決定においても個人の自由意思を尊重し、選択の幅ができるだけ広く許容される制度が必要である。最高裁判所は、このような制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとして議論を立法府に委ねたが、国会ではその議論さえ行われていない。
 国連女性差別撤廃委員会は、2003年以降繰り返しわが国に早急な法改正を勧告している。日本が夫婦同氏強制の範としたドイツでは1994年に、国連の勧告を受けて、スイスでは 2013年、トルコでは2014年に、それぞれ夫婦同氏・別氏を含む選択制が導入された。今世界で唯一日本だけが半世紀にわたり放置し続けている。
 2023年ジェンダーギャップ指数の国際比較で日本は146か国中125位にまで転落した。多様性を受け入れず不平等を是正しない国には、投資も人材も集まらない。女性が生きやすい国でなければ深刻な少子化傾向が留まることはなく、社会経済の停滞にもつながる。立法府は国連の勧告等を真摯に受け止め、選択的夫婦別氏制度の導入について早急に議論を尽くすべきである。

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