- 令和5年 4月 15日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 西原 千景
消費税法の改正要望書
消費税は、税制全体のバランスの中で広い課税ベースと単一の税率によって、水平的公平、中立、簡素を確保するという役割を担うものとして創設され、現在では、我が国の基幹税として位置づけられている。
令和元年10月より、消費税率の引き上げとともに複数税率が実施され、令和5年10月には、適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」という。)が導入される。
そしてインボイス制度を円滑に実施するためとして、令和5年度の税制改正においては小規模事業者対策等として1万円未満の取引についてのインボイス不要や、取引から排除されないようやむなく課税事業者となった免税事業者対策として2割特例が用意されていることには、一定の評価は出来るが、あくまでこれは時限立法である。
複数税率制度、インボイス制度及び免税事業者制度は、消費税制度をますます複雑にし、「公平・中立・簡素」の租税原則とは懸け離れたものとなっており、日常の会計処理・課税実務においても極めて問題である。
したがって全国女性税理士連盟は、以下の改正をするよう強く要望する。
1.複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすること
食料品等に対する軽減税率の導入は低所得者対策と説明されてきたが、次の問題があり、複数税率制度を廃止し、単一税率制度とするべきである。
複数税率制度は低額所得者より高額所得者の方により多くの負担軽減が及ぶこととなり、逆進性の緩和には結びつかない。
コロナ禍を契機として活発化した宅配飲食・ネット取引等の複合取引に見られるように、一つの消費活動に複数税率が混在し、事務処理の複雑化による事業者の負担が大きい。
2.インボイス制度を廃止し、現行の請求書等保存方式を維持すること
現行の消費税制は、取引に対する経済的中立性の観点から、広く世界中で採用されている累積排除方式の多段階課税であり、事業者において仕入税額控除を行うことは当然である。
この仕入税額控除の方式として、我が国においては、消費税導入後30 余年に及んで請求書等保存方式を採用してきた。この間、複数税率導入後においても請求書等保存方式が円滑に運用され、かつ、課税上の弊害は生じていない。これは、我が国においてこの方式が定着していることを示している。
しかし、インボイス制度が導入されれば、事務負担の増大を招き、免税事業者及び適格請求書の発行に対応できない中小事業者が経済取引から排除される可能性がある。その結果、基幹税たる消費税そのものが中立・円滑な経済取引を阻害し、とりわけ、中小企業者にとって死活問題となる。また、免税事業者特例が用意されるとはいっても、取引の規模・実態が変わらないのに、新たな税負担が生じる。
したがって、インボイス制度を廃止し、現行の請求書等保存方式を維持すべきである。
3.すべての事業者を課税事業者とし、零細事業者について申告不要制度を創設すること
課税事業者か免税事業者かの判定に基準期間を用いる現行の制度では、事業者にとって、基準期間の売上高とその課税期間の売上高とが乖離し、事業者の経営実態と消費税の納税義務とが関連づいていない。また、免税事業者制度の存在自体が消費税法を複雑にする一因となっている。さらに、インボイス制度において免税事業者特例を導入することは免税事業者制度を事実上縮小することになる。
したがって、インボイス制度を廃止するとともに、すべての事業者を課税事業者として取り扱い、その課税期間の課税売上高が一定金額以下の零細事業者については、申告不要制度を創設すべきである。