- 令和2年 10月10日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 三上 広美
消費税法の改正要望書
消費税は、税制全体のバランスの中で広い課税ベースと単一の税率によって、水平的公平、中立、簡素を確保するという役割を担うものとして創設され、現在では、我が国の基幹税として位置づけられている。
2019年10月より、消費税率の引き上げとともに、複数税率が実施された。さらに2023年10月には、適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」という。)が導入される。しかし、これらの制度は様々な問題を抱えており、今日の新型コロナウイルス禍における事業実態の変化につれて、一層切実な問題となっている。
全国女性税理士連盟は、以下の改正をするよう強く要望する。
1.複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすること
食料品等に対する軽減税率の導入は、低所得者対策と説明されてきたが、低額所得者より高額所得者の方により多くの負担軽減が及ぶことになり、逆進性の緩和には結びつかない。そのうえ、対象品目に当たるか否かの判断が困難であり、かつ、経済取引の中立性を阻害す る要因にもなるとともに、軽減税率の適用にあたっては、事業者にも混乱が生じている。新型コロナウイルス禍において活発化した宅配飲食・ネット取引等の複合取引に見られるように、一つの消費活動に複数税率が混在し、新たな混乱が生じている。
したがって、複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすべきである。低所得者対策としては、マイナンバー制度を活用して行う簡易な給付制度を導入すべきである。
2.インボイス制度を廃止し、現行の請求書等保存方式を維持すること
現行の消費税制は、取引に対する経済的中立性の観点から、広く世界中で採用されている累積排除方式の多段階課税であり、事業者において仕入税額控除を行うことは当然である。
この仕入税額控除の方式として、我が国においては、消費税導入後30年に及んで請求書等保存方式を採用しており、この間、請求書等保存方式が円滑に運用され、かつ、課税上の弊害は生じていない。これは、我が国においてこの方式が定着していること を示している。
しかし、インボイス制度が導入されれば、事務負担の増大を招き、免税事業者及び適格請求書の発行に対応できない中小事業者が経済取引から排除され 、消費税そのものが我が国における中立・円滑な経済的取引を阻害し、とりわけ、中小企業者にとって死活問題となることが予想される。特に、ニューノーマルの下で、全業種的に人員の削減や在宅勤務が行われ、新たな事務負担に耐えられない 状況となっている。
したがって、インボイス制度を廃止し、現行の請求書等保存方式を維持すべきである。
3.すべての事業者を課税事業者とし、零細事業者について申告不要制度を創設すること
納税義務免税事業者の判定に基準期間(特定期間を含む。)を用いる現行の制度では、事業者にとって、基準期間の売上高とその課税期間の売上高とが乖離し、事業者の経営規模と消費税の納税義務とが関連づいていない。さらに、免税事業者制度の存在自体が消費税法を複雑化する一因となっている。
とりわけ、新型コロナウイルス禍においては、全業種的に業績が急激に落ち込み、過去の基準期間を基準とした納税義務の判定は実態に合わないものとなっている。
したがって、こうした弊害を解消するため、すべての事業者を課税事業者として取り扱うべきである。ただし、その課税期間の課税売上高が一定金額以下の零細事業者については、申告不要制度を創設すべきである。