- 令和2年 10月10日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 三上 広美
民法改正要望書
民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を要望する
全国女性税理士連盟は、男女の本質的平等の保障および個人の自由意思尊重の観点から、また喫緊の課題である少子化対策の観点からも、以下の理由により、立法府において、すみやかに民法改正のための議論に取り組み、選択的夫婦別氏制度を導入するよう強く要望する。
1. 婚姻に伴う改姓は、婚姻前から積み上げてきた職業生活、社会生活 に影響を及ぼす
近年、女性の社会進出は顕著であり、職業生活、社会生活上の信用や実績等を積み上げてきた女性は増加している。しかし、婚姻によって改姓すると、その信用や実績等が断絶してしまうことになる。婚姻に伴う改姓により不利益を被るのは多くの場合女性である。
2. 通称使用は、便宜的なものに過ぎず、根本的な解決にはならない
平成27年12月16日、最高裁大法廷は夫婦同氏を強制する民法750条の規定について、初の合憲判断を示し、女性に偏る不利益を認めながらも、通称使用で一定程度緩和され得るとして、憲法に違反しないと結論付けた。
これを機に、政府は、運転免許証、住民票、マイナンバーカード、印鑑証明書への旧姓併記を可能とする施策を推し進めているが、名前の使い分けによって新たな問題が発生することが懸念される。このような旧姓併記の制度は証明の一助に過ぎず、民法改正による根本的解決が望まれる。
3. 同氏強制は少子化を招き、氏の承継を困難とする
民法750条は同氏を強制しているため、長男長女同士や一人っ子同士の婚姻を阻害して出生率低迷の一因となっている。また深刻化する少子化の中で氏の承継を困難としている。
4. 立法府は、最高裁判決の指摘、国連の勧告等を真摯に受け止め、選択的夫婦別氏制度の導入について議論を尽くすべきである
憲法24条は、個人の尊厳と両性の本質的平等をうたっている。人権が最大限に尊重され、自由と平等が保障される豊かな社会を構築するためには、氏の決定においても個人の自由意思を尊重し、選択の幅ができるだけ広く許容される制度が必要である。最高裁 判所は、選択的夫婦別氏制度に合理性がないと断ずるものではないとした上で、このような制度のあり方は国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとして議論を立法府に委ねた。
先進国で例外を許さない夫婦同氏制を採用しているのはわが国だけであり、国連女性差別撤廃委員会は、平成15年以降繰り返しわが国に早急な法改正を勧告している。