- 平成29年 5月9日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 伊藤 佳江
消費税法の改正要望書
平成28年改正消費税法において、消費税率の引き上げとともに、複数税率制度及び適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入された。
しかし、以前から指摘されている消費税法の問題点に加え、複数税率制度及び適格請求書等保存方式(インボイス制度)の導入により新たな問題点が生じている。消費税は我が国の基幹税として位置づけられているが、このままでは、消費税法は税制の基本原理たる課税の公平、税制の経済的中立性等の観点から問題である。
全国女性税理士連盟は、ここに消費税法につき、以下の改正をするよう強く要望する。
1.複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすること
食料品等に対する軽減税率の導入は、低所得者対策と説明されているが、低額所得者より高額所得者の方により多くの負担軽減が及ぶことになり、逆進性の観点から問題がある。そのうえ、対象品目に当たるか否かの判断が困難であり、かつ、経済取引の中立性を阻害する要因となる。さらに、軽減税率の導入により恒久的な税収の減少を招くこととなる。
したがって、複数税率制度を廃止し、単一税率制度とすべきである。低所得者対策としては、マイナンバー制度を活用して行う簡易な給付制度を導入すべきである。
2.インボイス制度を廃止し、現行の請求書等保存方式を維持すること
インボイス制度は、事務負担の増大を招き、免税事業者及び適格請求書の発行に対応できない中小事業者が、経済取引から排除され死活問題となることが予想される。我が国においては、請求書等保存方式が定着し、円滑に運用され、かつ、課税上の弊害が生じていない。
したがって、インボイス制度を廃止し現行の請求書等保存方式を維持すべきである。
3.すべての事業者を課税事業者とし、零細事業者について申告不要制度を創設すること
納税義務(免税事業者)の判定に基準期間を用いる現行の制度では、基準期間の状況と課税期間の状況とに齟齬が生じる場合がある。さらに、免税事業者制度の存在自体が消費税法の複雑化の一因ともなっている。
したがって、こうした弊害を解消するため、すべての事業者を課税事業者として取り扱うべきである。なお、その課税期間の課税売上高が一定金額以下の零細事業者については、申告不要制度を創設すべきである。
4.事前届出制を廃止し、簡易課税制度の適用は当該課税期間に選択できるようにすること
簡易課税制度は、中小・零細事業者の事務負担を軽減する趣旨で導入されているが、設備投資等が予定されている場合に、実額控除を適用するときは、簡易課税制度選択不適用届出書を事前に提出する手続きが必要となっており、事務手続きの簡素化の観点に即したものとなっていない。
したがって、簡易課税制度の適用については、事前届出制度を廃止し、当該課税期間に選択できるようにすべきである。