- 平成28年 10月15日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 伊藤 佳江
民法改正要望書
民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を要望する
全国女性税理士連盟は、男女の本質的平等の保障および個人の自由意思尊重の観点から、 また安心して仕事や結婚、出産、子育てのできる環境整備のために、以下の理由により、 立法府において、すみやかに民法改正のための議論に取り組み、選択的夫婦別氏制度を導入するよう強く要望する。
1. 婚姻に伴う改姓は、婚姻前から積み上げてきた職業生活、社会生活に影響を及ぼす
近年、女性の社会進出は顕著であり、職業生活、社会生活上の信用や実績等を積み上げてきた女性は増加している。しかし、婚姻によって改姓すると、その信用や実績等が断絶してしまうことになる。婚姻に伴う改姓により不利益を被るのは多くの場合女性である。
2. 通称使用は、便宜的なものに過ぎず、根本的な解決にはならない
平成27年12月16日、最高裁大法廷は夫婦同氏を強制する民法750条の規定について、初の合憲判断を示し、女性に偏る不利益を認めながらも、通称使用で一定程度緩和され得るとして、憲法に違反しないと結論付けた。
しかし、通称使用によって不利益は一定程度緩和されても、社会保険、税、パスポート等に関する公的文書等には通称は使用できず、また、通称名と戸籍名との同一性の確保など、新たな問題を生ぜしめることにもなる。通称使用はあくまで便宜的なものに過ぎず根本的な解決にはならない。
3. 立法府は、最高裁判決の指摘、国連の勧告等を真摯に受け止め、選択的夫婦別氏制度の導入について議論を尽くすべきである
憲法24条は、個人の尊厳と両性の本質的平等をうたっている。人権が最大限に尊重され、自由と平等が保障される豊かな社会を構築するためには、氏の決定においても個人の自由意思をできるだけ尊重し、選択の幅が広く許容される制度が必要である。最高裁判所は、選択的夫婦別氏制度に合理性がないと断ずるものではないとした上で、このような制度のあり方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとして議論を立法府に委ねた。また、15名の裁判官のうち5名が、民法750条は憲法24条の理念に反し違憲であると判断している。
先進国で例外を許さない夫婦同氏制を採用しているのはわが国だけであり、国連女性差別撤廃委員会は、平成15年以降繰り返しわが国に改正を求めており、平成28年3月7日に於いても早急な法改正を勧告している。