- 平成28年 10月15日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 伊藤 佳江
消費税の軽減税率導入に反対する要望書
平成28年度の税制改正では、消費税率を10%に引き上げるとともに、軽減税率制度を導入することとし、あわせて、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式(インボイス制度)を平成33年4月1日より導入することとされた。しかし、本制度の実施については、2年半延期されることとなった。
全国女性税理士連盟は、軽減税率の導入に強く反対し、低所得者対策としては簡素な給付措置を継続することを要望する。
1 軽減税率の導入を反対する理由
- (1)軽減税率の導入は、低所得者対策にはならない
食料品等に対する軽減税率の導入は、食料品等の支出が多い高額所得者への軽減効果の方が低所得者に対する効果よりも大きなものとなり、低所得者対策にはならない。
- (2)経済取引の現場では、対象品目の判断が困難であり経済取引の中立性を阻害する
対象食料品について法的に線引きされたとしても、今日における取引・商品・サービス等は多種多様化しており、経済取引の現場では、軽減税率の対象とするものと標準税率を適用するものとを合理的な基準で線引きすることが極めて困難であり、経済取引の中立性を阻害することになる。
- (3)中小事業者の事務負担が増大する
実際の取引に標準税率適用と軽減税率適用のものが混在することから、記帳及び計算・申告等の実務が煩雑となり、特に中小事業者の日常の事務負担が増大する。
また、売上税額及び仕入税額の計算の特例としての簡素な処理は、新たな税負担の不公平をもたらす。後日導入されるインボイス制度は、更なる事務負担の増大を招き、免税事業者及び適格請求書の発行に対応できない中小事業者は、経済取引から排除されることが予想される。
- (4)税率アップの効果が減殺され、更なる増税を招く
食料品等に対する軽減税率の導入は、8%から10%への税率アップの効果が減殺され、社会保障関係の財源に充当するとの当初の増税目標を達成することができず、更なる増税を招くことになる。
2 低所得者に対する逆進性対策
逆進性対策は、真に逆進性対策を講じなければならない者を対象とすべきである。低所得者対策としては、税制の複雑化や実施の困難性等を考慮し、当分の間現行の簡素な給付措置を継続すべきである。