- 平成 25年 4月 13日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 大藤 淑子
所得税法第56条の廃止の要望書
事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)の廃止を要望する
所得税法第 56 条は、同一生計親族に支払う対価(給与、地代家賃、支払利息等)を事業所得の必要経費とせず、またこれを受け取った側の所得としない旨規定している。
本規定は、戦後、伝統的な家族制度の残る中、親族に対価を支払う慣行も未成熟な状況下において、恣意的に対価を定める等により所得分散を図り、税負担を軽減しようとする「要領のよい納税者」に対抗するため、租税回避防止策として制定されたものである。
社会が大きく変貌する中、同一生計親族であってもそれぞれ独立した事業を営む者も多く、同一生計親族に支払う対価の経費性を一切認めないとする所得税法第 56 条は、もはや多様な経済実態にそぐわないものとなっている。
対価を支払う根拠となる事実があり、適正な対価が支払われている限り、租税回避行為に該当する余地はない。
同一生計親族に支払う対価については、その適正な金額を必要経費とすることが、所得税法の本則(第 37条)からいっても正しく、また対価の支払いを受ける側も所得とすることが相当である。その当然の帰結として、事業専従者に対し一定の範囲内で給与の支払い等を認める第 57 条も不要と考える。
現代社会は、女性の社会進出が進み、56 条が制定された当時の社会状況とは、世帯の類型や就労形態も大幅に変化・多様化してきている。少子高齢化が急激に進行するわが国では、とりわけ女性の能力を社会に活かすことが急務である。税制は、性別、婚姻、家族形態などに対し中立であるべきで、生計を一にする親族の受ける適正な対価を当然に評価し、それにより財産形成の機会を平等に保障するものでなければならない。
全国女性税理士連盟は、以上の理由により、「事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例」(所得税法第 56 条)の廃止を要望する。