- 平成 21年 2月 14日
- 全国女性税理士連盟
- 会長 内山 良子
税制改正要望書
事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例
(所得税法第56条)の廃止を要望する
所得税法第56条は、同一生計親族に支払う対価(給与、地代家賃、支払利息等)を事業所得等の必要経費とせず、またこれを受け取った側の所得としない旨規定している。
本規定は、戦後、伝統的な家族制度の残る中、親族に対価を支払う慣行も未成熟な状況下において、恣意的に対価を定める等により所得分散を図り、税負担を軽減しようとする「要領のよい納税者」に対抗するため、租税回避防止策として制定されたものである。
このため、「世帯」を課税単位として捉えており、個人単位課税を原則とする所得税法の例外的規定となっている。
しかし、今日、女性の社会進出は社会の要請であり、経済的に独立する者も急増している。最近では、各々独立した事業者である配偶者間の対価の支払いにつき、所得税法第56条をめぐる裁判も提起され、制定当時には想定できなかったケースも出現している。
社会が大きく変貌する中、同一生計であるというだけで、親族に支払う対価の経費性を一切認めない本規定は、もはや多様な経済実態にそぐわないものとなっており、課税上、新たな不公平を生じる結果となっている。
同一生計親族に支払う対価については、その適正な金額を必要経費とすることが、所得税法の本則(第37条)からいっても正しく、また対価の支払いを受ける側も所得とすることが相当である。
対価を支払う根拠となる事実があり、適正な対価が支払われている限り、租税回避行為に該当する余地はない。
全国女性税理士連盟は、以上の観点より、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例(所得税法第56条)の廃止を要望する。